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​顔面神経麻痺

顔面神経麻痺

顔面神経麻痺とは脳に病変があるものと、顔面神経の走行上に異常があるものとに分けられます。鍼灸の適応症は顔面神経の走行部位に病変があるものを主に対象とします。顔面神経麻痺のほとんどが原因不明で、顔面神経の血行不良が顔面神経を包んでいる顔面神経管内に浮腫をきたし、圧迫されて神経伝達障害を起こすものと考えられているようです。

症状は、顔のしわがなくなったり、目を閉じることが不十分だったり、強く閉じようとすると眼球が上方に回転したり、口角が下がったり、鼻唇溝が浅くなったり、食べ物が口の中にたまったりします。

顔面神経は涙や、味覚なども支配していますので、障害の部位により、味覚障害や、聴覚過敏、唾液や涙の分泌低下などがあります。長く患っていて、お薬の量や種類も増えていると、頻尿や睡眠障害などの自律神経の症状も訴えられる方もいらっしゃいますが、睡眠障害などは早い段階から改善されるようです。鍼治療ではこのような血行障害からくる病変に有効に作用改善させることができます。

元々原因不明な病気だったんですが最近の研究ではウイルス性の疾患から炎症を起こすのではないかと言われているようです。初期であればほぼ完治させられるようですが、長くなったり、重症の場合お薬ではなかなか改善させることが難しいようで、鍼灸を頼ってこられます。

鍼灸の場合、鍼の作用機序の特性で局所の血流改善を図ることにより筋委縮や拘縮を予防させることができますし、東洋医学の専門医ではない医師やほとんどの方がご存じないかと思いますが、ただ単にツボに刺して治療をしているわけじゃなくそのツボに集まっている神経や血管、感覚受容器といった人間が持っている反射機能を刺激してその結果得られた血管拡張作用などを利用して治療をしています。

その他にも、東洋医学の大昔からある学説(八綱弁証、病邪弁証、気血弁証、臓腑弁証、経絡弁証)によって病気を決定(弁証)して治療(論治)する弁証論治という言葉があり、現代医学の病気の概念から少し離れて考えるやり方もあります。

​東洋医学的な考え方では、原因が外からの刺激からくるものと、体の中の機能低下からくるものとに分けて考えて治療をしていきます。このような顔面神経に限らず、ほとんどの方が流れ的にはまず病院で診てもらい思わしくなかった重症の方が治療に見えられた結果での治療成績ですからかなり治療効果としては私自身はすごいことだと思います。その他各神経麻痺にも私が係わった治療成績からも鍼灸治療はかなり有効であると言えると思います

よくネットとか調べられた方からいろんなことがそこには書かれていますから、どうなんですかと書かれていることについて問い合わせを受けるんですが、心配になったこと、分からない事は目で見て判断するだけじゃなく、しっかり納得するまで聞いてから判断する方がいいと思います。できる限りわかりやすくお答えしますので遠慮なく聞いてください。

 

埼玉医科大学東洋医学センターの顔面神経に関する論文をご紹介したいと思いますのでご参考にされて下さい。

 

【引用文献】東洋医学鍼灸ジャーナル

埼玉医科大学東洋医学センターにおける顔面神経に対する鍼灸治療

はじめに

顔面神経麻痺は、日常の鍼灸臨床において比較的取り扱う頻度の高いい疾患であるが、
その有効性については専門医である耳鼻科医からの評価は決して高いとは言えないのが現状である。
このことは、顔面神経麻痺という疾患の自然治癒率が70%と高率であることや、急性期の薬物治療が9割を超える好成績であること、薬物療法単独群薬物療法に鍼灸治療を併用した群での比較試験において統計学的による有意差が認められないなど種々の要因があげられる
また鍼灸治療を受療する患者の多くが急性期治療で改善が認められなかったいわゆる高度神経変性(病院では治る見込みがない症状固定)である場合が多いのも原因の一つだと推察される。
埼玉医科大学東洋医学センターでは専門診療科との連携により、末梢性顔面神経麻痺の早期例や高度神経変性例の諸症状に対し、積極的に鍼灸治療を行い、臨床研究を推進している。
近年、高度神経変性例諸症状に対し当センターを含めたいくつかの施設より表情筋に対するアプローチの方法が報告されるようになり顔面神経麻痺に対する新たな治療法としての期待が高まりつつある。

顔面神経麻痺とは

顔面神経は表情筋や広頚筋を支配する第7脳神経であり、運動神経のみならず、分泌運動神経や知覚神経など、機能の異なる神経線維で構成されている。この顔面神経が何らかの原因により障害されると表情筋が動かなくなり、顔面神経麻痺を発症する。

【当センターで行っている鍼灸治療】
当センターにおける鍼灸治療は麻痺発症から2週間経過したのちも筋収縮が確認できる場合はSunderlandの5型分類法の1度もしくは2度であることから神経内膜管の破損がない軸索断裂であることが推測され、完全回復、もしくは回復が期待できる。
この場合、神経を目標とした神経を目標とした鍼通電療法を継続してもmisdirectionが起きることはない。
これに対し、2週間以内に急速に麻痺が進行し、筋収縮が微弱もしくは確認不能となる3度以上の変性の場合後遺症を免れることはできない。
こうした場合当科では置鍼、もしくは高頻度非同期鍼通電療法を行っている。
この方法は、完全麻痺期においては表情筋内の循環改善、運動回復期には表情筋分離運動の促進、misdirection後の病的共同運動期には短縮した表情筋のストレッチを行う事により、迷入再生回路の非強化ならびに残存する健常軸索支配を強化させる。こうした高度神経変性例では中枢への関与を期待し、上下肢に散在する遠隔部の経穴を併用する。

[症例1] 発症後薬物投与と鍼灸治療を併用し発症後2週間を経過したが改善されずその後鍼通電療法を継続した鍼通電時に筋収縮が見られる症例(鍼灸治療をされる方では比較的軽い)

初診[発症後2日目]

起床後、洗面時に口をすすぐことが困難、経過を見ていたが改善が見られないため二日後に病院を受診
当院神経内科を紹介され右顔面神経麻痺と診断。

副腎皮質ホルモン、ビタミン循環改善剤投与、同時に鍼治療開始
前駆症状として麻痺発症前2日間にわたり1時間程度持続する耳介内の鈍痛を自覚していた。
10日前にインドネシアから帰国したばかりだった。
(症状)
右兎眼+
流涙増加+
鍼通電刺激で筋収縮が見られた

5診目[発症後15日目]
発症後2週間経過後も顔面表情筋に筋収縮が確認されたため鍼通電治療を開始
右兎眼改善完全併願が可能
口笛動作不能、食事の際に右口腔内食物が残り、箸やスプーンで書き出さねばならない。

7診目[発症後29日目]
食事の際に右口腔内に食物が残ることはなくなったが、飲水時には注意が必要な状態。
流涙傾向は改善し、前額部のしわ寄せ、頬を膨らます動作は左右対称になった。

12診目[発症後50日目]
自覚的にも麻痺はほぼ改善し、ADL上も問題なくなった日本顔面神経研究会制定の治療効果判定基準に達したため終診となった。

【症例2】

患者:78歳女性 左顔面神経麻痺 鍼通電刺激で収縮が認められなかった重い症例。
現病歴:起床時より、眼瞼下垂などの左顔面部違和感を自覚し、耳介部や顔面部を冷やして経過観察するも、症状が憎悪したため、翌日当院神経耳科外来受診した。左顔面神経麻痺と診断され、副腎皮質ホルモンでの点滴加療をする予定であったが、受信時の血圧266/102Hgと高値であり、高血圧の加療と原因精査の為、即日入院となった。40歳代より高血圧を指摘され、自己測定においても収縮期血圧で200mmHg以上であることは認識してはいたものの、内服等の治療を受けたことはなく、放置していた。
(症状)
右兎眼右上.下眼瞼下垂
流涙増加
顔面部の知覚正常

4診目(発症後18日目)
2週間経過後、左顔面神経を目標とした鍼通電療法において、左表情筋収縮が確認不能であるため、左前頭筋、左上下口輪筋、左口唇下制筋、左広頚筋へ15分間の50㎐非同期鍼通電療法を施行。
8診目(発症後29日目)
退院になるも、左眼瞼下垂の改善が見られず、テープで引き上げて来院した。100㎐非同期鍼通電療法を開始した。

16診目(発症後55日目)
完全閉眼は不能であり、左下眼瞼結膜が露出している。
27診目(発症後97日目)
完全閉眼は不能である。左表情筋の随意運動は若干認められるものの、重度の眼瞼下垂が持続している。
35診目(発症後136日目)
完全閉眼が可能となる。安静時非対称が改善したが、左眼瞼下垂は持続している。
40診目(発症後153日目) 病的共同運動(口笛動作時の左眼裂狭小)が出現してきた。健側眼裂幅6mm、安静時麻痺側眼裂幅6mmであるが、頬を膨らます動作により、眼列幅が5㎜へ狭小した。
45診目(発症後222日目)病的共同運動が憎悪し始める。健側眼裂幅6㎜安静時眼裂幅6㎜であるが、口笛動作により2㎜へと狭小し頬を膨らます動作では、0㎜となった。治療後眼裂幅は、口笛動作、頬を膨らます動作ともに4㎜へ改善した。
55診目(発症後400日目)、病的共同運動が持続している。健側眼裂幅6㎜安静時眼裂幅6㎜であるが、口笛動作、頬を膨らます動作2㎜へ狭小している。治療後眼裂幅は、口笛動作、頬を膨らます動作ともに4,5㎜へ改善した。
希望により現在も月1回の治療継続である。

【鍼灸治療成績】

顔面神経麻痺に対する治療成績は、一般的に75~90%の患者は自然軽快し、成人より小児の回復が良好とされ、上部顔面筋の回復が先に認められることが多く、通常発症後18日以内に何らかの症状改善が認められた症例は、ほぼ回復が期待できる。麻痺発症後、2週間目以降でも、顔面神経を目標とした鍼通電療法において患側表情筋の筋収縮が確認できる場合は、回復が期待できる。
しかし、現在、専門医などからは顔面神経麻痺に対する鍼治療、特に鍼通電療法の有効性が疑問視されている。このことは、低周波治療などによる電気刺激では、表情筋を一塊に動かすことは可能であるが、分離運動を行わせることは困難であり、麻痺の回復を遅延させるだけでなく、病的共同運動を促進させる可能性があるとの過去の報告によるものである。
参考文献:①青野央、村上信五、本多伸光他「モルモット眼輪筋の神経再生に対する電気刺激の効果1997年」②栢森良二「顔面神経再生の臨床経過と電気生理学的所見2004年」
しかしながら、高度神経変性例においては、麻痺発症早期に鍼通電療法で表情筋を一塊に動かすことは困難であり、また、我々が行う微細な鍼治療、特に鍼通電療法では、個々の表情筋を個別に動かす事は決して困難ではない。更に、当センターでのこれまでの検討では、上記した治療法により、以下のような結果を得ている。
①284例の顔面神経麻痺患者において、初診時スコアが低値でも、高い改善率が得られた。
②鍼治療にステロイド600㎎から大量点滴療法+SGB+SGLを併用したB群133例よりも、ステロイド30㎎からの内服療法+経口薬物療法を併用したA群192例のほうが高い治療成績が得られた。
③12例の顔面神経麻痺後遺症患者において、高頻度刺激による非同期鍼通電療法は、後遺症状の中でも、最も苦痛とされる病的共同運動、特に口輪筋運動時の眼裂狭小を改善させるだけでなく、後遺症状の抑制にも有効であった。
以上の事から、鍼治療は、神経変性が軽度な患者群のみならず、高度神経変性例や現代医学的にも難治とされる後遺症状に対しても、病態や病期に応じた治療を行う事で
、期待すべき効果が得られるものと考える。

【まとめ】

顔面神経麻痺は予後良好な疾患であり、特にベル麻痺は、WHOによる鍼灸治療の適応疾患として認識されているが、

専門医からの評価は決して高いとは言い難い。
しかしながら、当センターにおいて、専門診療科との連携による治療成績では、初診時麻痺スコアが低値であってもその改善率は高く、また、ステロイド大量療法とSGB・SGLに鍼治療を併用した群の方が高い治療成績が得られた。
更には、鍼通電療法において、現代医療においても積極的治療法のない、不快で難治な後遺症状を抑制できていることなどから、鍼治療、特に鍼通電療法は、顔面神経麻痺患者に対する治療法の一つとして有効かつ有用な治療法であることが示唆された。

と、埼玉医科大学東洋医学センターの論文でもご報告されているように大変有効性が高い治療法だと私自身は思います。

ここでご紹介したように当治療院では顔面神経麻痺に関しては鍼通電療法を積極的に取り入れてますが、

それでも一部のお医者様の間ではいい評価は得られず、これ以上治る見込みがないので最悪悪化させず漢方薬やビタミン剤を処方して様子を見た方がいいと言われるお医者様も多いと聞きますので、治療に関してはいろいろな意見を御参考にされてご自身で判断されることをお勧めします。

聞きたいことがあればどんなことでもご相談されてください。

一人でも多くの方が改善されることを願って治療をしていきます。

​他にも関連論文がありますのでご紹介したいと思います。

治療穴図」.jpg

【引用文献

難治性のHunt症候群(ウイルス性顔面神経麻痺)における鍼通電治療と置鍼治療の比較検討

東京女子医科大学付属東洋医学研究所

東京女子医科大学耳鼻咽喉科

東京女子医科大学東医療センター耳鼻咽喉科

北総白井病院耳鼻咽喉科

【要旨】

当施設で鍼治療を行ったHunt症候群患者の中で、①ENoG値0%、②発症90日以内、③麻痺スコア20点未満という3つの条件を満たし、
尚且つ発症6か月時点まで経過観察することのできた15名を対象として、鍼通電治療と置鍼治療の効果を比較検討した。
麻痺側顔面部へ鍼通電治療を行った群(以下、鍼通電群)は8名、置鍼治療を行った群(以下、置鍼群)
は7名であり、両群間の背景因子に有意差は認められなかった。
効果判定には、柳原の40点法による麻痺スコアと、西本、村田らの考案した後遺症評価法の変法による後遺症スコアを用い、
鍼初診時から発症6か月時点までの麻痺スコアの変換、発症6か月時点の後遺症スコアを、それぞれRepeated measuresANOVA,
Mann-WhitneyのU検定を用いて比較した。
その結果、麻痺スコアの回復に両群間に有意差はなかったものの、
置鍼群に比べ鍼通電群の回復によい傾向が見られた。また、後遺症スコアは両群間に有意差は見られなかった。
近年、低周波刺激を禁忌とする意見がでてきているが、今回の調査では後遺症の出現状況に差はなく、
むしろ麻痺の回復に関しては鍼通電治療の方が置鍼治療より良い可能性も示唆された。

【結論】

末梢性顔面神経麻痺のリハビリテーションとして行われる低周波刺激は回復に悪影響を及ぼすという報告を受けたことから、難治性と判断されたHunt症候群における鍼通電治療と置鍼治療の結果をret-rospective studyにより比較し、低周波刺激の有無によって治療効果に差が生じるか比較検討をした。

1.発症6か月時点までの麻痺スコアの回復に両群間で優位さは認められなかったが、鍼通電群の麻痺スコアの回復にやや良い傾向が見られた。

2.発症6か月時点の後遺症スコアに両群間で有意差は認められず鍼通電群の方が後遺症を発現させやすいという事はなかった。

3.今回の検討から鍼通電治療が置鍼治療と比べ、麻痺の回復ならびに後遺症の発言に悪影響を及ぼすとは考えられなかった。

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